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ロクコレ短編フェス 12/10

前書き

所々厳しい感想を書きますが、演劇を初めて10年も経っていない若僧の独断と偏見で書いていることをご承知の上で読まれて下さい。逆に、この感想に対して意見や批判等があれば各々Twitterやブログ等で発信して頂きたいですし、是非それを拝読したいです。基本的にはロクコレを通して、参加団体の方々が演劇に意欲を持って、福岡演劇界が盛り上がる事を期待しています。

マルレーベル『万歳』

20分程度の作品。2人芝居。ほぼほぼ会話がない演劇。演劇というよりもチャップリンの無声映画とか、が~まるちょばに近いかも。(「る?」でも、が~まるちょばが使っている黒いパネルを使っていたので、加茂さんのマイブームなのかも。)

出演者の2人の身体の動きがリンクしているという設定。そしてリンクしたまま、下手から上手、上手から下手へと何度も往復する。その距離、上手から下手まで20mくらいあった。始めの5分くらいは2人のやり取りは面白かったものの、そこからあまり進展が無かった。逆に、あと20分くらい続けていたら、本当に疲れて倒れ込んでしまうみたいな事件が起こって面白かったかもしれない。

空間の使い方は面白かったので、もう舞台の外まで出て行ってしまって、その様子を動画中継するとか、もう商店街まで行ってやっちゃうとか、それ位やっても良かったのではないか。

劇団佐賀さわげ『新説:この世界より』

30分程度の作品。2人芝居。うーん。申し訳ないが、正直、あまり書くことがない。編集の仕事をする2人の女性のお話。コテコテの段取り芝居。別に正面を向いて説明する演出を否定する訳ではないが、今回の演目はそれに向いてない。役者達も器用な感じではない。役としての演技ではなく自分の癖が出てしまっている。わざわざスクリーン用の白い布を使って映像を投影しているが、内容的に映像の必然性はない。特別、盛り上がる訳でもない。さわげさんには、他の劇団を見て色々学んで頂ければ良いかと。

即席ユニットちりあくた『着物侠客』

45分程度の作品。一人芝居。小物の使い方、音響・照明の使い方がとても良かった。小物は刀(模造刀)と着物の2つ。刀は自転車やカチンコ、主人公の友達のヒカル君になったりする。刀をヒカル君と見立てるときには、人形劇のようにカタカタと音を立てたりもする。

 冒頭では、「これは自転車に乗っています。」とか、「これはヒカル君です。」とか、詳しい説明があるものの、だんだんとその説明が省かれていく。最後の方には刀を持ったヒカル君とかが抱きついてくるシーンが描かれて混乱したが、それはそれで「今、刀は何になっているのだろう?」と色々想像させられて面白かった。

 物語は映画の撮影を邪魔した同級生に復讐するというシンプルなものであるが、情報の出す順番が上手いなと思った。特に、カメラをクラスの生徒に壊された瞬間の主人公の心情描写は良かった。ただ、やはり、この演目は小道具の扱いが難しく、演出が分かりづらい部分もあった。それでもちゃんと成立していたのは、役者の古賀さんの力、特にメリハリの高さがあったからではないか。しかしながら、作演の今後に期待。

Yb(イッテルビウム)『はまののりゆき』

落語。40分程度の作品。着物で座布団に正座するのではなく、スーツを着て、椅子に座る形式。みずほさんがとてもいい声をしていてテンポ感が心地よかった。特に、おじさんの演技が人情味を感じてとても良かった。反面、少々眠くなったというのもある。良い意味で寝落ち用に録音が欲しい。若干、後半に集中力が切れた瞬間があったのはもったいないかも。

 演劇フェスで落語を取り入れてしまう試みはとても面白いと思う。ただ、スーツ姿だと落語を観るというよりも、話の面白いサラリーマンの話を聞いてる感覚で、現実に引き戻される感じがする。着物を来ている方が良いかもと思った。

若宮計画『なにやってんの』

35分程度の作品。一人芝居。ハナコシアナダニを見張る仕事をしている女性のお話。

 生きがいも無く生きていて、社会から無視されている(と感じている)女性が自分自身を、何をやってるか知らないけど気持ち悪いという理由で駆除されそうなダニに投影している構図が素晴らしかった。何者にもなれない自分に悩んだ経験は誰にでもあるだろう。それを何万匹もいる見分けもつかないダニという形で表現するのは秀逸だった。そのダニはホワイトボードに赤い転々で描かれているだけで、その無機質な記号的表現が秀逸だった。

 その女性は、ダニが本当は花粉を食べて空気をキレイにしてくれている良い存在なのだと説明する。その不器用ながらも熱弁する姿に心を打たれた。その説明は、ただ呼吸しているだけのダニも、ただ生きているだけの自分も、否定しないでくれという叫びのようにも感じた。

 また、舞台設定が会議室というのもあって、枝光アイアンシアターのホールではなく、館内の寂しげな多目的スペースを使用していたのが臨場感がありとても良かった。私も一匹のダニとして生きていこうと思う。

ギムレットには早すぎる『BOMB』

40分程度の作品。声だけの出演1人を含めると4人の芝居。復讐するために爆弾を作って会社を爆発させようとする男の暗い物語だったが、全体的にはギム早らしくコント調。とてもユニークな言葉選びでありながら、リアルで繊細な会話が良い空気感を作り出していたと思う。例えば、相手の話に全然納得していないのに、「はー、なんかスッキリしました」という返しを釈然としない顔で言うとか。そういうコミュニケーションが好きだった。

 ギム早の座組の方には申し訳ないが、客演の青野君が上手いなと。私は青野君の陰キャ・ダメ男感が大好きだ。集中も切れないし、ハプニングが起きてもブレない。爆弾を作っている男の心理的な部分が、手足の落ち着きのなさとかに出ていて、それが演技の邪魔にもなっていない。

 私がギム早のいくつかの公演を見て来た中で、この作品が一番満足度が高かった。この脚本は複数人で書いたらしく、それぞれがちゃんと持ち味を出しながらも、まとまりを持って作れているのは素晴らしいと思う。 独自のやり方でどんどん面白い劇を作ってほしい。

劇団言魂『ハイハイ!』

40分程度の作品。2人芝居。股間が電源プラグになった兄とその妹のお話。脚本と演出が面白いというか、もうズルい。ロクコレで一番大きな笑いが起こったのはこの作品ではないか。このアイディアだけでキングオブコント予選突破できると思う。

 前半は兄の股間が電源プラグになった事が判明して笑いが起こる。しかし後半では、恥ずかしさから周りにそれを打ち明けられない兄と、早く治してあげたい為に周りに相談して回る妹とのすれ違いが描かれる。そのすれ違いや葛藤がとても緻密で引き込まれた。これだけリアルだったのは、作演・兄役を担当した山口さん自身の男のプライドを捨てられない葛藤を出しているからではないかと思う。電気切れで這いずりながら、玄関へ向かう兄の姿がとても印象的だった。自分もそういう姿勢で創作に臨みたい。