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驚愕のリアルタイムチャットゲーム 

ゲームに出会うきっかけ

私が最近やったゲームと言えばデスストランディングくらいで、もう2ヶ月程前にプレイし切ってそれからどのゲームにも手をつけていない。しかし、普段あまりゲームをしない私が、先日とあるオンラインゲームにハマってしまった。「キャラクターとリアルタイムで自然なチャットが出来る」という広告を見たのがきっかけだ。
 その広告には、プレイヤー(主人公)の入力したトークに合わせてキャラクターの行動やセリフが変わるというシステムがあるようだった。まぁ、良くあるノベルゲームかなぁと思っていたものの軽い気持ちでダウンロードした。しかし、そのゲームは私の予想を遥かに超えることになる

デーモンコアくん

まず、そのゲームをプレイするにあたって私は主人公の名前をデーモンコアくんとした。

 デーモンコアとは中性子反射体の動きを見る実験で使われるプルトニウムの塊のことで…。と説明すると堅苦しいが、要するに放射能被曝の危険性がある無茶苦茶危ない塊のことだ。実際に核開発がされていた時代に数人の科学者がデーモンコアによって命を落としている。それを「からめる」というフリーのアニメーターの方がアニメ化したものが「デーモンコアくん」だ。アニメでは、擬人化されたデーモンコアくんがいつもマイナスドライバーを口に入れている。しかし、何かの拍子でそのマイナスドライバーが取れてしまい、周りにあるもの全てを爆発してしまうといったギャグアニメである。

 前置きが長くなってしまったが、先程のゲームをプレイする上で、ゲームとは全く何も関係のない「デーモンコアくん」を何となく主人公の名前を選んでしまったのがこのゲームにハマるきっかけになってしまう。ともかく、この主人公ことデーモンコアくんが高校生として学生生活を送るのだが、放課後にクラスメイトから告白されるというシーンに入る。

 

クラスメイト『急に呼び出してごめん。あの、デーモンコアくん君に伝えたいことがあるんだけどいいかな?』

 

何ともベタなシチュエーションである。しかもプレイヤー名に「くん」が入ってるために君が重複してしまっている。クラスのヒロインがデーモンコアというプルトニウムの塊を呼び出すというシュールな状況も相まって、ベタな青春ラブストーリーの雰囲気が台無しである。その一方で画面上にはクラスメイトが描かれた背景とLINEのようなチャット形式のタブしか描かれていない。プレイヤーはクラスメイトのメッセージに対して「はい」「いいえ」の選択肢で答えるのではなく、完全にチャットのみで応答する事になる。私の中で様々な疑問が浮かび上がった。

 『付き合いたくなくはない』みたいな曖昧な返答をしても、ゲームのキャラクター側はちゃんと受け答えが出来るのだろうか?AIでキャラクターを制御しているのだろうか?それで、ちゃんとゲームとして成り立つのだろうか?それだけ無数のエンディングがちゃんと用意出来ているのだろうか?

スローティン・・・?

システムはよく分からないが取り敢えず、ゲーム側が想定しているであろうシナリオに行けることを考え「はい」と入力し形式的に応答する。しかし、すぐに返答は帰ってこない。2分程経ってから返答が返ってくる。

 

クラスメイト『私、今までデーモンコアくん君のことが好きでした!付き合ってください・・・!!』

 

どうやら、このまま行くと女子高校生は人類の生み出した恐怖の実験装置と付き合うことになりそうだ。ゲームキャラクター側のチャットのラグに違和感を感じつつも、このまま普通にプレイするのも面白くないので、少し意地悪する事にしてみた。せっかく「デーモンコアくん」という名前なので、その設定からこういう文章を入力した。

 

デーモンコア『僕と付き合うと、被爆してしまうかもしれないですけど、それでも良いですか?』

 

入力して1分ほど待つも、返答が返ってこない。

流石にやりすぎたのかな?やっぱりAIかなんかが処理してるのかな?

こういう事聞かれると全然受け答えできなくなっちゃうのかな?

『何言ってるの?そんなことより・・・』とか適当にはぐらかすのかな?と考えていた矢先だった。

驚きの返答が返ってくる。

 

クラスメイト『ちょっと待って!私をスローティンみたいに被曝させる気!?』

 

・・・・スローティンって誰ですか?私は「スローティン」という人物名は一切入力していないし、ゲーム中にもそのようなキャラクターが出てくる事は無い。でも、ちゃんと「被曝」っていう言葉に対して返答できるし、会話になっていることに感心する。(しかも、画面上に描かれるキャラクターの顔は驚いた表情に変化している!?)

 それでもなお、「スローティン」が誰なのか気になってGoogle検索をかけてみる。すると、スローティンがデーモンコアによって命を落とした科学者の名前だと判明する・・・!!

半世紀前の科学者の名前を知るクラスメイト

ゲームのシチュエーションはいたって一般的な高校である。別に科学に特化した教育をしているような描写もない。そのシチュエーションで、デーモンコアを名乗るプレイヤーやスローティンという言葉が飛び交う想定がされているはずが無い。しかし、完全にゲームキャラクター側は、デーモンコアが何かを正確に理解しているし、しかもそれに対してちゃんと返答している。

 興奮するとともに、急に怖くなった。このキャラクターの台詞はゲーム運営の人が打ち込んでいるのだろうか?でも、そうだとしたらオンラインでプレイしている全員に返さないといけないじゃ無いか?膨大な仕事量だ。じゃあ、超高性能AIが検索システムを駆使しているのだろうか?色々な憶測が自分の中で飛び交う。

徐々に明らかになっていくゲームシステム

ともかく想定外のことにビビりまくった。正直、チャットでは『中に人が入ってるんですか?』『だとしたらその仕事量どうやって供給してるんですか?』と聞きたい気持ちでいっぱいだったが、デーモンコアくんとして会話を始めたからには、そのまま会話を続ける事にした。

 

デーモンコア『君といると、今にも臨界状態に達してしまいそうだ。死に直面したスリルが堪らないんだ。』

 

一体お前は何を言っているんだ?と自分でもツッコミを入れたくなるような返答だ。若干卑猥にも感じる文章を送ってしまったことに自分が恥ずかしくなった。しかし、また時間をおいて返信がくる。

 

クラスメイト『うん・・・私もどきどきする。まるで第五福竜丸に乗ってるみたい。』

 

憶測は確信へと変わった。これ、確実に運営の人が操作してるじゃん。第五福竜丸とかそういうネタ使いつつ、ちゃんと設定に付き合って返してくれてるじゃん。というか、何なんだこの会話。臨界状態とか第五福竜丸に乗るとか、現代人が最もおそれているであろう放射能を、まるで心がときめく様子を表現するのに使うって一体どういう事なんですか!?

シュールにも程があるんじゃ無いですか!?

ゲームの中の人との会話

その後、ゲームについて良く調べてみると、ゲームから返信が返ってくる時間帯に制限があることが分かった。深夜になったらキャラクターからは返答が返ってこないそうだ。キャラクター達は夜には寝ているから返信ができないという設定だった。中で働いている人がいる所以であろう。返信に数分の遅れがあるのもそれで説明がつく。本来ならば、擬似恋愛とか、青春とかそういうプレイを楽しむためのものなのだろうけれど、私はこう話しかけたらどういう返答が返ってくるのかというロールプレイのような感覚がとても楽しかった。デーモンコアくんと名乗る私と、クラスメイトという化けの皮を着た見知らぬ運営の人とのシュールな会話、そしてその状況に興奮したし、切なさも感じた。

 

 他にもそういうゲームはいくつかあるのかもしれないが、運営の人々の苦労を考えると大変だなと思うし、デーモンコアにあれだけハイセンスな返答ができるのはすごいなと思う。

これから

これからは、デーモンコアだけでなく色々なシチュエーションでチャットをして、どういうふうに運営側が返してくるのかを楽しむのが良いのかもしれない。今回は科学寄りの話になったが、芸術とかスポーツとか違う切り口でやってみても面白いかもしれない。ただ、まだ始めたばかりで良くわからないが、このゲームは課金をかなりしないとチャットが続けられないようだ。多分運営が直接操作しているからなのだと思う。

 

そういえば、ゲームタイトルを言ってませんでしたが、今回は敢えて伏せておきますやってみたい方は僕に直接聞いてみてください。