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作品を愛しながらも批判する事

 一般的に良い評価を得られる作品を創作するためには、その作品を楽しんで没頭する事と作品を事細かく評価・批判する事を同時にやっていかなければならない、と思っている。もし、自分の作品が大好きでも、その好きが他の人々に受け入られるものでなければ、自分や自分の身内だけが楽しめればいいという独善的なものになる。逆に、批判ばかりしていれば創作する事自体を恐れて何も生み出す事が出来ない。

しかし、この2つの視点を同時に持つのはとても難しい。創作を好きになるまでは割と誰でもできるとは思うが、作品を良くしようとする時にどうしても、批判的に見るのを恐れてしまう。私自身、自分の書いた脚本が既成の物語の二番煎じだったり、作った曲の歌詞が巷で良く聞くフレーズだったりするというのは良くある。
  それを「新規性がない」「つまらない」と自分で自分の作ったものをバッサリと切ってしまうのは非常に苦しい決断だ。これは創作者1人だけの問題ではなく集団で作る際も同じだ。何十人で何日間も何週間もかけて作った演劇を「この劇ってあの映画の劣化版コピーだよね〜」などと劇団員が言い出すことは中々出来ないだろう。(私がそれの役者だった場合は絶対に出来ない…。)
楽しくワイワイやっていこう(雰囲気を乱す者は要らない)とする集団ではこういう批判は起こりづらいし、より良くする機会も減っていくのだろう。

しかし、批判はその作品がただ気に入らないからという理由で批判してはいけない。まぁ、良くある話ではあるが、「この脚本がこういう展開に行けば、新しくて面白い話になるのではないか?」という提案の形式での指摘である。そこを「なんかつまらん」でぶった切ってしまうと、そこから生まれるものはただのストレスでしかない(そのストレスも創作に昇華出来るのであれば逆に良いかもしれないが…。)

だからと言って、自分でそんな提案が出来ないケースの方が多い。だからこそ信用のおける友達や経験の深い先輩にそういった評価・批判を求めるべきなのだ。
それが突き詰められていけば、面白くならないものは無いと思う。